AIS水球見聞録


<目次>


 ナショナルリーグ後から、オリンピックに向けて競技力向上に関する様々なプロジェクトが始まった。

1)生理学面     スイムテスト、スキンホールド、HRの測定
2)バイオメカニクス 選手のフットワークの水中ビデオ撮影
3)医学面      各選手の障害の治療とリハビリ
4)栄養面      リカバリー・バーなどサプリメントの説明と配布

 月に1度ぐらいの割合で、スキンホールドテストが行われる。水球チームのスポーツ生理学担当が、研究棟の測定室で各選手に時間を設定して測定する。一人あたり10分程度の測定である。
 測定箇所は、triceps(上腕三頭筋上部)、subscapular(肩甲骨上部)、biceps(上腕二頭筋上部)、supraspinale、abdomen、thigh、calfである。その他にも、身長、体重、指極、大腿長、大腿囲、下腿囲、脱力時上腕囲、緊張時上腕囲を測定している。
 スキンホールドの測定はAISの全種目に関して行われていて、その他に、競技特有と思われる部位に関しても測定している。

 Polar社制のHRモニターを使い、睡眠時、練習後の回復期、そして練習中のHRをモニター、記録していた。練習中に関しては、ジョギング、ボクシングの他、ウォームアップからパス、シュート、ゲーム形式に至るまで装着していた。水中の測定時には、HRモニターの上から防水テープを貼り、手首のメモリーにもクッション的なテープを巻いていた。
これらの測定は、ピーター・ローガンを中心とする生理学チームが測定している。練習内容を時刻と共に詳細に記録して、HRの動向と比較するようである。

 選手の疲労度や、栄養状態を見るために、練習前に選手数名の血液を毛細管に採取していた。この採取された血液は、すべてAIS内にある研究所で検査が可能である。

 多くの選手は何れかの部位に障害を抱えている選手が多いが、AISではここで診療や治療が受けられる。練習中にケガをした時もすぐに治療を受けることができる。まさにスポーツ医学と現場とが密接に結びついている。

 抜き打ちでドラッグテストが行われる。選手は、夕方の練習前か、練習中に検査官が予告なしに訪れて、選手に検査の同意を求める。選手は、検査官と共に別室に行って、尿を採取される。これは、IOCの検査ではなく、オーストラリア独自のものであると思われる。(写真は合宿に来たUSA選手が説明を受けているところ)

 ナショナルチームにはいくつかのスポンサーがあるようだ。
そのひとつにFILAがあり、ナショナルチームのウェアから水着、サンダル、ガウンなどの提供を行っている。コマーシャルフィルム作成のための撮影がある日の午前9時半から4時頃までオリンピックプールで撮影があった。4人の選手には275ドルの報酬が与えられていた。

 ドン・キャメロン氏は、ビデオ画像をパソコンに取り込むよのを勉強していた。水球オフィスのマークとジャミーが実際には編集作業を遂行。
 インフォメーションセンター内のMacを使ってビデオを編集している。SportsCodeというソフトを使用。このソフトは、ハードディスクに取り込んだ画像に自分で決めたコードを入力できる。スポーツ種目によって様々なコードを自分でアレンジで来る。例えば水球ならば、攻撃権がどちらか、シュートを打った選手、その結果(ゴール、キーパー、アウト等)、攻撃の種類(セット、速攻、退水ゾーンなど)を各項目としてインプットできる。このようなコードを打ちこんでおくと、後で検索をしてその項目を簡単に再生できる。

 ドン・キャメロン氏は、練習の場にいつもいるわけではない。もっぱらビデオなどの分析や情報収集が得意なようで、よく研究室でビデオ研究などを行っている。また、選手のシュートフォームやキーパーの動作を撮り、研究している。選手にもよく見せている。パソコンへの動画の取り込みもインフォメーションセンターで説明を受けており、これから、多大なビデオライブラリーの編集作業がスカラーシップコーチのジャミーによって始まるのだと思う。
 一方、デネシュ・ポシェック氏は、もっぱらトレーニングメニューを指示し、練習中の指導を行っている。ウェイトトレーニングやボクシングトレーニングこそ専門のスタッフに任せているが、スイムや水球のトレーニングについては、彼がメニューを立てている。その特徴は、個人によって多少メニューが違うことである。ケガや体調の悪いものは当然のこと、前日の試合出場や朝練参加の有無などにより、ハードなものライトなものに分けている。

 AISのコーチは、決して選手を怒鳴ったり、権威で押さえつけたりしない。現在の選手のほとんどが25歳以上の大人であるので当然であるが、彼らのかなりわがままな意見をうまくまとめ、練習が効率的にできるようにしている。これは若いコーチではできない。選手は、必ず練習参加への自分の可不可をいうが、うまくこれをまとめている。それから、練習開始の促し方なども決して権威的ではない。


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